2012年2月25日土曜日

胸をはって、堂々と。

「ハナコ、座って!」
また席を離れてしまったハナコちゃんは、お父さんに高いきいいいいとした声の叫びで返した。

お昼を食べに大戸屋でであった、40代手前のお父さんと小学校にはいる前ぐらいと思わしきハナコちゃん。ハナコちゃんは落ち着いて座っていられないし、すぐにきいいいい、と叫び出す。ちゃんと言葉は理解できるし、お父さんとの会話は成り立っているようだった。

よく落ち着かない子供の親御さんで、慌てて叱ったり猫なで声でものを与えたり、縮こまってしまう人がいる。いつも、何だか見ていられなかった。とくに周りに恐縮し切ってしまう人がかわいそうでならなかった。しつけの問題だけじゃない、仕方がないことなのかもしれないのに、それが理解されないのはとても不幸なことだと思っていた。

このお父さんは違った。ただ、ハナコちゃんが座っていられなければ座るよう叱り、いただきますとごちそうさまが言えた時には褒めていた。誰にも申し訳なさそうな顔をせず、どっしりと、ただハナコちゃんに向き合っていた。

ふたりでひとつのお子様ランチを食べて店を出ていく背中を不思議な清々しさで見送りながら、私は鯖の炭火焼定食に箸をつけた。

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